2013年3月7日木曜日

モバイルミュージアム 行動する博物館 21世紀の文化経済論 西野 嘉章 (著)

・リーブルなにわで見て興味を持った。何と言っても僕の社会人生活は博物館の内装屋からスタートしてるのだ。ずっとIT畑で働いてきたが、超低賃金の過酷労働であったにも関わらず仕事の達成感が高かったのはそちらの方。未だ北見の緑のセンターを超える満足感を味わったことがない。

・本書はこれからの博物館のあり方への一つの提言と言ってよい内容なのだが、どうも前半はしっくりこない。「博物館かくあるべき」と主張していることがおざなりと言うか紋切り型の陳腐な話にしか感じられなかった。また、経済的な視点について何度も触れている割には、具体的な数字の提示がないのでステレオタイプな印象を持ってしまった。ただし、後半の具体的な話になると少し面白くなってくる。

・モバイル・ミュージアムとは収蔵物を可搬モジュールにして、移動巡回展、企業への収蔵物の貸し出しなどを行うことにより博物館の資産である(と著者が主張するところの)収蔵物の活用度を上げて、博物館の社会への寄与、プレゼンスを高めようというもの。読んでみると、どうやらある程度の収蔵物の規模がある中型以上の博物館が主たる対象となりそう。札幌で言えば開拓記念館や青少年科学館辺りということになる。

・僕自身が興味があるのは、どちらかと言えば道内市町村の小規模な博物館なので、本書で書かれていることを実践すると言うより、本書でインスピレーションを得たアイディアを実践してみたいと思った。ただ、博物館が提供する最大のものは、通常の空間では不可能なほどの大規模な展示物が包みこんでくれる空間感だと僕は思っているので、それがもっとオープンになればいいのになと思う。大英博物館に行った時、子供から若者達まで、ジーパン姿で展示物の前で座り込み、スケッチしたり宿題をやっているのを見たのが強く印象に残っている。

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