2013年7月9日火曜日

ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗 (講談社現代新書) 円谷 英明 (著)

・円谷プロと言っても「しょせん下請けの中小企業(P94)」。そこを直系の後継者達が勘違いした辺りから凋落のモメントが動き出していたのかも知れない。本書では円谷プロの現状に至るまでの軌跡が著されているが、どこまで公正かと言えば疑わしさは残る。結局、同族の身内批判の域を出ていない可能性は大いにある。

・仮面ライダーやガンダムがいまだに変化しながら継続しているのに対してウルトラマンの現状が目を覆わんばかりの惨状であるのはなぜなのか。そのことに対する直接の答えは本書では触れられていないが、考察するための材料は提供されている。自分としては、仮面ライダーは石ノ森章太郎から、ガンダムは富野由悠季から生まれたのに対して、ウルトラマンは必ずしも円谷英二から生まれたわけではないという点にその辺りの鍵があるのではないかと思っていたのだが、どうやらそれだけではないということが本書を読むと見えてくる。

・個人的には、地球の防衛というウルトラマンの基本パラダイムこそが殻であり、それを打ち破ることが新たな世界を創り出すことになるのではないかと考えていたが、どうやら殻は、円谷プロ自体だったのかも知れない。買収されてしまい、円谷一族が放逐された今こそ、実は新たなウルトラマン誕生への胎動が始まる時なのかも知れない(「ウルトラマン列伝」を見ている限り、とてもそうは思えないが)。

・かつて、ウルトラマンのCGパートを製作している会社の社長と話をする機会があった。その時に「今の円谷プロでも、あなたほどウルトラマンについて熱く(暑く?)語れる人はいないですよ」と言われた。その時はお世辞だと思ったが、あながちそうではなかったのかも知れない。自分並みに語れるファンなど全国にいくらでもいるが、円谷プロと仕事をしていた彼の目からすれば、そう言いたくなるほどの状況だったのだろう。

・円谷一族自身の手で凋落してしまった経緯を知り、それでも、最後に語られる著者の現状を読むと、若干ながらも寂寞の念を禁じ得ないのは、やはり「円谷」という名に感じるところがあるからなのだろうか。そして、読み終わった後だと、本書のタイトルは本当に胸に迫ってきて、泣けてくる。

・ちなみに1966年の今日(7/10)、ウルトラマンの放送が始まった。

 

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