2014年2月13日木曜日

本当に役に立つ「汚染地図」 (集英社新書) 沢野 伸浩 (著)

【ノート】
・タイトルとしては「汚染地図」を掲げているので、GIS入門書的な内容を本書に期待する人は少ないだろう。でも、実は本書は入門書的な性格を多分に持っていて、GISの基礎知識を吸収/再確認できるし、幾つかの基本的な分析手法についてのちょっとした概説もあったりする。「入門書」と言うと、背景やら歴史やら用語の解説が書かれおり、手っ取り早く、対象についての概要や活用例を知りたい時にはまわりくどい。だからと言って、基礎知識がなければ、事例集や応用例を見ても理解できないだろう。本書は、その両者を概観的に新書のボリューム内でカバーしている。どちらも中途半端なのだが、結果として、GISをについて詳しくない読者が、GISの活用シーンについての大雑把な展望を得ることができるような構成になっている。そんなわけで、GISを既に使っている人にとっては色々と中途半端な本なのだが、狙ってなのか結果オーライなのか、GISに詳しくない初心者にとってはちょうどいい構成に仕上がっているように思える。

・本書の構成は、福島の原発事故を中心に、著者が携わってきた事例について、GISを軸に概説しながら紹介するという体裁をとっている。結果として、本書は3つほどの重心を持つことになった。つまり
 1)GISについての概説
 2)簡単な分析手法の紹介とその現場のチラ見せ
 3)GISを活用していく提言

・雑誌の書評で本書が取り上げられており、「GISというツールを使い」と書かれてて、そんなド直球な名前のGISツールがあるのかと興味を持ったのが本書を読もうと思ったきっかけ。結局、書評者がGISについて知らなかったというオチだったようだけど。

・ちなみに、本書内で紹介されているツールは2つだけで、gvSIGとqgis。ArcGISという、デファクトスタンダードなGISソフトの影がチラチラと垣間見えるが、「高価なソフトでは1時間ほどかかる1万個のポリゴンディゾルブがgvGISでは10秒でできてしまう」なんて書き方からすると、OSS推しというのが著者のスタンスらしい。最初の取っかかりに少し馴れが必要なのは、高価なGISソフトでもOSSなGISソフトでも変わらないのだから、まずはOSSを触ってみるというのはアリでしょ。ちなみに、データさえ作れれば、GoogleMapやGoogleEarth、そして、我らが国土地理院の「電子国土Web. NEXT」なんかでも、結構なことはできるものです。

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