2015年2月15日日曜日

なぜ世界でいま、「ハゲ」がクールなのか 講談社+α新書 福本 容子 (著)

 関西では子どもの頃は「アホ」と同じぐらいの軽さで「ハゲ」と言っていた。「何言うてんねん、このハゲ」「アホなこと言うてると、しばくで、このハゲ」といったような感じで。
 大学時代の同期で、若くして頭髪が薄くなった者がいた。彼が長期休暇の間に関西でバイトをした時に、自分よりも少し若い年代の連中と一緒に会話をしていた時に、そんな感じで「何言うてんねん、このハゲ」と言われた時、「何もそこまでハッキリ言わんでも」と半泣きで抗議したらしい。閑話休題。

 本書は知り合いからススメられて読んでみた。タイトルからしてインパクトが大きいが、いつの間に、ハゲがそんなクール・ジャパンみたいなことになってたんだろうかと思う。
 内容的には、古今東西のカッコいいハゲのプチ列伝があったり、ハゲに対するお国別許容度を比較してみたりと、かなり面白いネタが詰まっている。また、マイノリティに対する社会の視線、多様性の許容度ということにもサラリと触れられている。
 もし、知り合いで頭髪を気にしていたり、秘密裏にカツラを使ってる人がいたら、決して他意はないことを宣言しつつ、本書の一読をおススメします。本書は決してハゲに対する揶揄的なものではなく、明るくポジティブにエールを送る本。これだったら、自分も薄くなったら思い切って剃髪するかな、と思うほど。

 なお、国内カツラ市場は1330億円。初期費用で70万〜100万かかる。しかもゴールがなく(ふさふさに戻ることはない)コストをかけてメンテナンスを継続しなければならない。ちなみに、効能が科学的に認められているのは塗り薬(リアップ)と飲み薬(プロペシア)だけらしい。ご参考までに。

【目次】
第1章 世界の政治家とハゲ
第2章 日本のハゲ
第3章 経営者とハゲ
第4章 髪の有無と影響力
第5章 髪の文化人類学
第6章 ハゲノミクス
第7章 ボウズファッション
第8章 ハゲのリアル
第9章 ハゲと日本経済

ターンエーの癒し 単行本 富野 由悠季 (著)

 一連のガンダム作品の中では、ターンエーガンダムが一番好きで、奇跡のような作品だと思っている。全ての始まりだから、やっぱりファーストでしょという知り合いもいるが、それを言ってしまうと広がりがないので、自分としてはファーストは別格だと位置づけている。ちなみに、今、リアルタイムでやっている「ガンダム Gのレコンギスタ」は富野さんが直々に監督を務める久々のガンダムだが、ターンエーガンダムへの橋渡し的な位置づけを感じさせる。

 そんなターンエーガンダムの制作舞台裏を富野監督自身の弁で読み解けるものと期待したのだが、期待外れだった。これは、こちらの期待が勝手なものだっただけということ。実際は、富野監督が、のたうち回っていると言うか、のたくっている姿を、読みづらい文章でつづっているという内容で、しかも、それがすこぶる偏執狂的なもの。そこここに、監督の作家性やガンダム、アニメ、映像作品に対する洞察なども散見され、興味深く読めるスポットはあるのだが、そんな偏執狂的な文章の波間にあるものだから、かなり読みづらいものだった。よい言い方をすれば、等身大な文章ということかな。

 ところでTV版のオープニング/エンディングソングは西城秀樹/谷村新司が歌っているのだが、本書で紹介されている彼らとのエピソードは、富野監督の性格とも相まって、なかなか感動的。

2015年2月8日日曜日

狩猟 始めました --新しい自然派ハンターの世界へ-- ヤマケイ新書 安藤 啓一 (著), 上田 泰正 (著)

 職場の同僚に聞くところによると、最近、じわじわと狩猟ブームが来ているらしい。ハンターになるまでの過程や、それ以降の体験を描いた小説やコミックも出版されてきているとのこと。世の中、「銀の匙」やそういう作品のように、「働くおじさん」的な色々な職場が様々な媒体で紹介されるのが一つの流れになっているのかも知れない。

 本書ではハンターになるまでのプロセスや、やってみないと分からない苦労話もサラッと盛り込みつつ、メインは狩猟という行為について、著者がハンターとして活動していく中で感じたこと、考えたことが綴られている。愛しい生き物としてのシカと美味しい食べ物としてのシカの境界線はどこにあるのか。この矛盾と言うか葛藤を受け入れている姿勢が好印象。

 狩猟はお手軽なものではない。昨年秋にシカ撃ちに連れていってもらった時に実感した。山の中を奥まで分け入るのだが、その時に立てる音は、山中に響くほど大きなもの。そうでなくても敏感な野生動物達が気づかないはずがない。シカなどの生態や行動パターンなどを頭に入れた上で動く必要があるのだが、そうやって少しずつ狩猟対象のことが分かってくることが自然との一体化につながると著者は表現している。同僚のハンターも、そういう心持ちには共感できるものなのか、今度、聞いてみよう。なお、本書の最終部分で、ハンター擁護が、若干、美化されて持ち上げ過ぎな印象。

 ちなみに、北海道のエゾシカは現在で約60万頭の推計。農業被害は年間で60億円(P180)。なお、農水省では平成28年度までに30万頭までの減少を目指している(第4期エゾシカ保護管理計画)のだが、こうやって被害額が出てきているということは、届け出があるということだろう。そうであれば、そのための保険制度があるのかも知れないと思って調べてみたら、それらしいものがすぐに見つかった。他にも、あまり表立ってはいないけど、色々な保険があるんじゃないだろうか。
http://www.maff.go.jp/j/keiei/hoken/saigai_hosyo/

【目次】
第1章 狩猟との出会い
第2章 動物観察と狩猟
第3章 自然暮らしの狩猟~どうしてハンターになったのか
第4章 動物を慈しむ心で野生肉を得る
第5章 皮や骨も大切に使う
第6章 野生動物と人間の暮らし
第7章 ハンターとなるために必要な手続き